2014年6月7日〜12日に宮城大学亀倉ギャラリーにて開催された「上多田川小学校の子供たちがそそいだまなざしの花を咲かせよう」について展示会場の写真と共にご報告させていただきます。
 
この展示の前身となっているのは、2014年の2月、宮城県加美町にある上多田川小学校を訪れ、小学校の子供たちと一緒に行った写真展示のワークショップです。
その際、子供たちには事前にインスタントカメラを渡していました。
カメラの撮影可能枚数は、最高で27枚。全部使い切ってもいいし、好きな枚数だけでも構いません。
冬休みの宿題として自分の「好きなもの」をテーマに写真を撮ってきてくれるようお願いしました。
現像した写真は、名前とコメントが書かれた色画用紙と裏表になるようにラミネート加工が施され、特製の竹ひごで作った展示台の上に1枚ずつ設置することになりました。
ワークショップでは、子供たちの目線に合うように竹ひごを切って高さを調整し、思い思いの場所に写真を置いてもらいました。
小学校の体育館には、写真の花が咲いた春の野原のような風景ができあがりました。
 
子供たちが撮影した写真を初めて見た時、何気ない写真であるにも関わらず胸にぐっとくるものがありました。
構図がアーティスティックで素晴らしいとか、すごい一瞬がおさめてある、という理由からではありません。
撮り直しのきかないカメラなので、「現像してみたら暗くて、何を撮ったかわからなくなっちゃった」というコメントの付いた写真もありました。動いてしまってピントがぼけているものや、見切れている写真もありました。
でも、そこには子供たちが普段見ているものが写っています。
学校に通うために乗るバス、一緒に暮らす家族や友達、小学校の中でお気に入りの場所やがんばってもらった賞状。
その中には小学校の廃校によって失われてしまう風景もあります。
「好きなもの」を撮ってきてねと言われ、シャッターを切った子供たちの写真からは、彼らが大切にしているものごとへ抱いている温かな気持ちや、これまで通ってきた小学校の廃校について感じていることなどが伝わってきました。
 
宮城大学で行う展示では、ぜひ訪れる人たちに子供たちがそれぞれの視点で撮影した写真の1枚1枚、写真に添えられたコメントひとつひとつに目をとめて欲しいと考えました。
ワークショップの時は、一所に咲く花畑を遠くから眺めるような風情がありましたが、今回は並べられた写真の中を通り抜けながら、1枚1枚の写真を見て回れるような会場構成を行いました。
写真の展示といえば、額に入れたり、引き延ばした大判の写真を壁面に貼るというのが普段よく見られる方法ではないかと思います。そのため、無数の写真が竹ひごの展示台で支えられ、あちこちに置かれている珍しい風景に思わず足を止めてくださった方も多かったようです。
 
また、会場の壁面には、写真の花を取り囲むようにワークショップの様子を表す写真を並べました。
これらの写真は宮城大学の卒業生であり、写真家の佐藤早苗さんの撮影によるものです。一生懸命に作業に取り組む子供たちの姿や、楽しそうな表情などの一瞬一瞬が切り取られています。
子供たちの真剣なまなざしと、その先に見えている様々な風景。どちらも一緒に観ていただくことのできる展示となりました。
  
会期中、亀倉ギャラリーに足を運んでくださった皆様、また展示にご協力くださった皆様、どうもありがとうございました。
キュレーター:小野松由紀(中田研究室 修士2年)

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