
近年、ネットショッピングの利用率が増加しています。衣類・服装雑貨等におけるEC化率については2018年で12.96%となっており、年々上昇していますが他の分野よりも低い状況です。様々な仮想試着を可能とするシステムが開発されています。しかし画面上で体の上に画像を重ねてイメージすることができるものの袖を通すことができない、リアリティに欠ける等の課題があります。
そこで本研究では、自由に衣服をコーディネートして、実際に試着した際のイメージをより現実的に認識できることを目的とし、利用者が自宅のPC等で利用可能な仮想試着アプリケーションの開発を行います。
調査
1.インターネットショッピングの現状
通販で衣服を購入する時、現状ではカタログ等でモデルが着用している写真からイメージを確認し、サイズや寸法で判断するケースが多いです。スマートフォンが普及している中で、よりネットショッピングで購入する人が増えると予想されるため、リアリティのある試着が体験できるかが今後の鍵になっており、様々なシステムの開発が行われています。例えば実店舗内でユーザーの動きに合わせて衣服画像を画面に表示させて仮想試着を可能とするシステムが開発されているますが、画面上で体の上に画像を重ねてイメージすることができるものの、袖を通すことができない、リアリティに欠ける等の課題があります。
2.インターネットショッピングで不満に感じる点
被験者13人に事前アンケートを取ったところ通販で衣服を購入して失敗した経験があると答えた人は9人でした。失敗した要因を9人に7項目から複数選択可で回答してもらいました。最も多かったのが「サイズ」で7票、次に「生地」「色」「似合わなかった」と続きました。
研究方法
1.提案手法
システムの流れは図に示した通りです。
(1)衣服モデルの作成
- 衣服モデルの作成:Marvelous Designer
実際の服を元に、丈や袖などの長さを測りました。それを元にテクスチャも選択して作成しました。男女合わせて上下7種類用意しました。
(2) アバターの作成
- 胴体:Marvelous Designerに標準装備しているアバター
- 顔モデル:UnityのアセットのAvatar Maker
顔モデルはあらかじめ入手した被験者の写真から本人に似たモデルを作成することが出来ます。胴体と顔モデルをBlender上で合体させます。
(3)ボーンの挿入
- ボーンの挿入:mixmo
アバターと衣装にそれぞれボーンを入ます。mixmoではモデルの上にマークを置くことでボーンを挿入できます。
(4) ユーザー動作との連動
ユーザーはKinectのカメラ前に立ちます。Kinectから得られた深度画像に基づく骨格検出により、実際の体の動きに合わせてアバターを動かします。アバターを動かすことでより着用した際のイメージを湧かせることができます。
2.評価実験
(1)操作方法
- 試着したい服の画像を上下1つずつクリックします。
- 画像をクリックするとマネキンが出てきます。服が決まったらカーテンを開けるボタンをクリックします。
- 選択を間違えた場合や服を変える場合はリセットボタンをクリックします。
- 体を動かして試着を体験します。
(2)実験方法
- 実験の流れ:操作方法を説明→実験→アンケート
- アバターの有効性を比較するために、実際に服を着た写真を見せました。
- 被験者はKinectの前に立ち、自由に体を動かして、画面のアバターを見ながら試着の様子を確認します。
3.実験結果
(1) 画像とアバターとの比較
サイズ感について、写真では評価が分散していましたが、アバターでは「どちらかというと良い」が6人、「良い」が4人と肯定的な評価が多かったです。また生地については、写真では「どちらかというと良い」以上が9人で比較的評価が高かったですが、アバターでは「どちらかというと悪い」以下が8人となり、写真よりも劣る結果となりました。着用イメージについてはアバターが「どちらかというと良い」以上に全員が回答しており、写真よりもアバターの方がイメージが湧くということがわかりました。購買欲については写真、アバターとも分散していましたが、アバターの方が良い評価が多かったです。
(2) 開発システムの評価
画像の上をクリックして着せ替えられることにより、着替えやすさ、操作のしやすさでは評価が高かったです。アバター特有の動きや前後が見えることによってイメージがしやすくなると回答する人が多かったです。
まとめ
考察
実験結果の(2)から、手軽に着せ替えられトータルコーディネートが簡単できることが、アバターの大きなメリットであることがわかりました。また(1)から、サイズ、着用イメージの向上にアバターは有効であり、このことが購買欲に関する評価の上昇に繋がったと考えられます。よってアバターを用いた試着では上下様々なパターンの試着が簡単にでき、動きがつくことで着用イメージの理解向上に繋がるということがわかりました。ネットショッピングを利用する人が不満に感じる点として、使用イメージ、サイズ、色、生地が分かりにくいことが挙げられていますが、本システムの利用により使用イメージやサイズの理解がしやすくなると考えられます。
一方で生地は写真よりアバターが劣っており、表現の精度を高める必要があります。生地は映像を拡大すれば把握しやすいのですが、アバター全体を見ようとするとわかりづらくなるため、テクスチャを示す画像や、拡大したアバターも別途用意するといった補足が必要です。
終わりに
本研究では、自由に衣服をコーディネートして、実際に試着した際のイメージをより現実的に認識できることを目的とした仮想試着アプリケーション開発を行い、有効性について確かめました。実験結果からアバターを用いることで実際の試着に近いイメージを得られることがわかりました。一方で生地についてはもっと正確さを求めることが必要です。
今後はスマートフォンを用いて誰でも利用できる手軽なアプリケーションとしての実装を進めるとともに、小さな画面でも生地が伝わるようにすることが課題です。
参考文献
[1]総務省:統計Today,No.141
https://www.stat.go.jp/info/today/141.html
[2]総務省:平成 30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)
[3]臼井花奈,佐藤弘喜,”インターネット通販サイトのイメージに関する研究”,日本デザイン学会 第64回春季研究発表大会
研究を終えて
私自身よくネットショッピングするのですが、失敗した経験が何度かありました。また店舗で購入するときも試着が面倒くさく、試着しないまま購入してしまうことがありました。仮想試着のシステムが様々開発されていますが、まだ身近なものになっていないと思います。より使いやすく便利で購入時の失敗を防ぐためにこのシステムを開発しました。
服を選択して着せ替えをしたり、体と連動してアバターを動かすというシステムを開発するのに苦労しましたが、アバターを用いた試着での効果があったのでより仮想試着が普及していくと思います。