2018年の夏休みも終わる頃、本部棟2Fの大階段前や交流棟1Fのに突如として「光り輝くサイン」が設置されました。この光るサインたち一体…?と、多くの学生が驚いたのではないでしょうか。編集部でもこのインパクトのあるサインの制作背景を調査したいと考え、情報収集を進めたところ、事業構想学群の中田千彦教授がディレクションされているとの情報をキャッチしました。
そこで、サインの制作意図やデザインに隠されているコンセプトについて、中田先生に直接インタビューさせていただくことになりました。
PLUS ULTRA –
まずは、とりわけ気になった本部棟2Fのサインについて聞いてみました。あのライトに表記されているPLUS ULTRA-は、交流棟2F の前生協があったオープンスペースを指していて、プルスウルトラと読むそうです。プラスウルトラと呼んでしまってもいいよ、と中田教授。ラテン語のスローガンのようなもので「もっと前へ」や「発展させる」のような意味を持っています。
そして、この文字をよく見るとULTRAの後にハイフンがついていて、その後に自由に言葉が続けられるようになっています。これは、このオープンスペースが使い方によって様々な呼び名に変化し、加えて雰囲気さえも変えられることを示唆しています。交流棟2Fオープンスペースの使い方は、「創造的で自由に」という素敵な願いが込められた命名です。それによって、本部棟という閉鎖的な空間と交流棟という開放的な空間、そしてその2つの場所と中間的な場所である亀倉ギャラリーのそれぞれが役割を果たしながら存在している新しい宮城大学の構図が出来上がりました。
(写真:交流棟サイン)
サインのデザイン
ライト自体は、無機質な印象で白をベースとして、黒い文字が表示されています。とてもシンプルなデザインとなっています。デザインの際に意識したことは洗練されすぎていないもの。イメージは、国分町の雑居ビルの階数表示だそうです。
そして、このライトの在り方には中田先生も熱弁されていて、いつもの空間に「何か違うもの」があるということが面白いという感覚をぜひ皆さんに味わってもらいたいそうです。夏休み明けに大学に来た学生が「なんだろうこれは?」と疑問を呼び起こすための配置となっているとのこと。確かにほとんど毎日通る2F大階段前にあのサインが現れた時はインパクトは大きく、学生の間で話題になっていました。
あまりデザインばかりが先を行き過ぎてもいけないし、親しみやすすぎるとその場と調和してしまい驚きへとは繋がらない。今回のこのサインは絶妙なバランスな仕掛けとなっているのかもしれません。
(写真:本部棟サイン)
4つのCって?
インタビューを進める中で、私自身が最も強く印象に残ったのは、交流棟1F産業連携センター前にある「Creative Constructive Corporation Cognitive」の文字についてのお話です。煌々と輝いていて、存在感が非常に強いのでみなさんも印象に残っているのではないかと思います。英語の意味は、順に創造的、建設的、協調、認知を表し、すべてLEDライトで作られています。そして、この4つの言葉がこれからの宮城大学のデザインには必要なのではないかと中田教授は仰います。
Creative。いう間でもなく創造的であること。新しく、常識に捉われない視点でものごとを考え、創り上げること。Constructive。建設的であるということ。論理が構築された誰でも理解できるようなデザインを心掛けること。デザインは自分だけがわかるものではなんの意味も持ちません。Corporation。お互いのクリエイティブをさらけ出して、協調すること。
そして最後のCognitiveは認知という意味です。中田教授曰く、この認知はお互いが隅から隅までそうだよねって同意できること、そういうことを常にできる状態であることの意味と考えているそうです。腑に落ちる、みんながそうだよねって思えるようなデザインを目指すことが重要なのだと感じました。
これは、シンボリックかつメッセージ性の高いサインとなっていると思いました。この横を通る度に、光る文字が私たちにデザインのあり方を教えてくれているような気分になります。今は腑に落ちなくても、何年後かにこの4Cを体感したときにふとこの電飾が思い出されるようなシンボルであるようにとの想いが込められています。掲げられたこのCから始まる4つの言葉はデザインを学ぶ学生への新しい指針となるのではないでしょうか。
(写真:交流棟産業連携センター前)
中田先生ってどんな人?
中田教授といえば、白いメガネをかけていて、いつもストールを巻いている人という共通イメージがあるのは、デザイン系学生にとっては宮城大学あるあるかもしれません。そこで、なぜいつもストールを巻いているのですか?と聞いてみると・・・。
ストールを巻くこと、白いメガネをかけること、中田教授を象徴するものが中田教授にとって「構え」であり、役割であるからとのお答え。みんなが私の事をそういうものだと思っているので、あえてそうゆうのを壊したくないという想いが根底にあるそうです。それは、凄く合理的なことで、みんなが変なマッチングをしないように配慮しているなどという思案があるというのです。
自分自身にも周りの環境にも自分の手の届く範囲には意識を注ぐのが当たり前であると中田教授は仰っていて、実際に、研究室にある椅子や机どれをみてもデザイン性が高くお洒落なものばかりです。それは中田教授の在り方なのだなあと思いました。また、いい意味で他の人があまり考えないような考え方をする面白い方だと思いました。
(写真:中田教授研究室)
おわりに
インタビューをしなければ分からなかったことや見えてこなかったことなどがあり、お話を聞いていて純粋に楽しかったです。特に「PLUS ULTRA-」のハイフンがオープンスペースの活用の在り方を端的に表していると感じました。また、これからの宮城大学でのデザインで大切にしたい「4C」もとても強く印象に残りました。
このようなひねりの効いたデザイン意図に触れると、どんどん人に広めたくなってしまいますよね。読んでいただいた皆さん、新しいサインや中田先生について理解が深まりましたでしょうか。中田教授、貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。
(編集部 赤坂)