現状と課題

初めにリサーチしたのが宮城県松島市の祭り「松島流灯会 海の盆」です。東日本大震災を受け、供養の意味を込めた新しい祭りとして始まりました。現在も地域の人々に愛されている祭りです。

灯籠流しの歴史について調査を行いました。

リサーチ対象である松島流灯会海の盆は、700年間続く大施餓鬼会という行事の伝統を大切にした夏祭りです。供養の行事であるこの大施餓鬼会に似た行事として、川施餓鬼というものがあります。川施餓鬼は水死人の霊を弔うために川で行われる法会で、灯籠流しのルーツになったともいわれています。

また、1947年、広島への原爆被害に遭った人への供養として、人々は手作りの灯籠を川に流していたそうです。これが現代の灯籠流しの始まりだと考えられています。

私たちは灯籠流しについてアンケートを行い、400名以上の方にご回答いただきました。幅広い年代で、東北以外に住む方からの回答もあり、現代の人々の灯籠流しに対する意見を集めることができました。

下のグラフはアンケートの回答から一部抜粋したものです。

1.祈りの機会の減少

  • 感じる
  • どちらでもない
  • 感じない

2.灯籠流しの目的

  • 知っている
  • 何となく知っている
  • 知らない

3.灯籠流しの本質とは

  • 水に流す
  • 火を灯す
  • 祈る

松島流灯会の立ち上げメンバーである、鹿野護教授と大宮司綾さんのお二方にインタビューし、松島流灯会に対する想いや、灯籠流しの祈りの本質について詳しくお聞きすることができました。

鹿野護教授

─── 灯籠流しの行程の中で、「流す」「灯す」という行為の重要度はどのくらいですか?
海上に浮かべて流し、遠くへ離れていくのが一つのポイントだと思います。

─── 鹿野先生が灯籠流しに参加しようと思ったきっかけは何ですか?
2011年に震災があったということで供養的な行動をしたいなっていうことで携わった感じですかね。震災への思いをもって参加しました。

─── 最初の2011年の震災があった時に形を変えたということで、祈りの変化についてはどう思いますか?
供養以外の祈りが増えているっていうのがわからないですけど、わざわざその場所に来て時間やお金をかけて灯籠を流すというのはそれなりの覚悟・意識があってきてると思うんですよね。だからもしどんな祈りだったとしても強い祈りがあると思いますね。

─── 新しく考える灯籠の形について、LEDなどを使って新しく作るという意見があったのですが、鹿野先生が思う変えないでほしい灯籠の行為はありますか?
火そのものよりも暗闇の中で明りをともすというのが重要だと僕は思います。素材に関しては、消えないゴミを作ってしまうと祈りに繋がらないと思うのでその点は進化した方がいいと思います。

─── イベント性か伝統を残すこと、どちらを重視するかなど祈りのある祭りに関して大事なものはなんだと思いますか?
本来は、人を集めるのが目的じゃないと思います。金銭面でも地域の負担が大きいのと、次の日ゴミだらけなんですよね。もっと静かに祭りをすることによって逆に長期的にできて何度も参加してくれるんじゃないかなということを祭りを立ち上げるメンバーでは話していました。

大宮司綾さん

─── 震災後なぜ花火大会に代わるお祭りを受け継いで開催したのですか?
流灯会の700年の歴史を受け継ぐためにも、原点回帰をコンセプトにした祭りを開催したいと思ったのがきっかけです。震災のあった松島の海で毎年灯籠流しを行うことにも意味があると考えていますよ。

─── 灯籠流しにおいて、大宮司さんは一番祈りがこもっているものはなんだと思いますか?
私は水に流すという行動が祈りの一番込められたものだと考えます。今あるところから動いていくという流れが供養の意味が強いのではないかと思います。

─── 一番の目的である供養以外の祈りが、灯籠流しに込められていることに何か感じることはありますか?
供養以外の祈りでも、今の自分を再確認して未来に繋がるというのが大切だと思うので、何か強い思いをもって祈っているのであればいいと思います。

─── 流灯会 海の盆は大宮司さんにとってどんな存在であり、今後どうなっていってほしいですか?
原点回帰とその本質を失わないようなお祭りであってほしいというのがまずありました。イベントというよりこのお祭りを通して自分の育った故郷の記憶を残していけるような存在になって欲しいです。

─── お祭りの開催当初と今では何か取り組みが変化してきていますか?
開催当初の核となったメンバーがずっと運営するだけではバトンが巡っていかないと考えたので、定期的に運営のメンバーを変え、受け継いでいけるようにしています。

─── どうやってお祭りの歴史を知ってもらいたいと考えていますか?
毎年小学生に灯籠にイラストを描いてもらい、その中での力作を選ぶという行事により、それを見に家族が訪れたことから広める活動が自然とできていたと思っています。

─── 大宮司さんにとって祈りとはなんですか?
祈りとは自分自身の振り返りですかね。今の自分を見つめなおすという意味が強いです。ご先祖様に感謝し、過去の自分を振り返り、未来の自分への思いをはせる瞬間のように思えます。

灯籠流しにおける祈りの本質

リサーチを通して現状や課題を導き出し、
灯籠流しにおける祈りの本質についてこのように考えました。

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